2025/06/12 18:25
豆の“品種”によって、味はどう変わる?
前回のテーマは、アラビカとロブスタ――
コーヒー豆の“原種”についてでした。
今回はもう一歩踏み込んで、「品種(Variety)」による味のちがいを見ていきましょう。
■ 品種とは?
品種って…いわば「家系」のようなもの
同じ原種の中でも、地域ごとの気候や環境、品種改良などで
さまざまな品種が存在します。
これは、お米で例えたら分かりやすいのではないですか?
新潟魚沼産、秋田産、山形産などの産地と
コシヒカリ、あきたこまち、つや姫…などの品種がありますよね。
それぞれに特徴があって、好みや用途の違いがあるのと同じ、
ブラジルやコロンビア・タンザニア・インドネシアなどの産地と
珈琲豆にもたくさんの品種があります。
豆によって、香りやフルーティ、甘み、コクなど、味の個性をが感じられます。

■ アラビカ種の主な品種と特徴
◎ ティピカ(Typica)
最も古いアラビカ種の品種
柔らかな甘みと優しい酸味、バランスのとれた味わい
病気に弱く、生産性が低いため、希少性が高い
◎ ブルボン(Bourbon)
ティピカの突然変異種。豊かな甘みとまろやかなコク
赤や黄のチェリーがあり、標高が高いほど複雑な風味が出る
◎ カトゥーラ(Caturra)
ブルボンの突然変異種で、背が低い
ブラジルや中米で多く栽培。軽やかな酸味とバランスの良い味
◎ カトゥアイ(Catuai)
カトゥーラとムンドノーボの交配種
生産性が高く、風味はすっきり。ブレンドにも多く使われる
◎ ムンドノーボ(Mundo Novo)
ティピカ×ブルボンの自然交配で誕生
甘みとコクがあり、やや重厚な味わい。ブラジルで多く栽培される
◎ ケント(Kent)
インドで開発された病害に強い品種
柔らかい酸味と穏やかな甘さ。アジア圏で見られる品種
◎ SL28・SL34
ケニアで開発。華やかな酸味、果実感が強く、非常に評価が高い
特にSL28はワインのような風味で人気
◎ ゲイシャ(Geisha)
エチオピア原産、パナマで注目されるようになった希少種
ジャスミンやベルガモットのような香り、繊細で茶のような口当たり
非常に高価だが、一度飲むと印象に残る唯一無二の風味
■ カネフォラ種(ロブスタ)の代表的品種
カネフォラ種は、アラビカに比べると品種の多様性は少ないですが、
その中にも特徴ある系統があります。
◎ コニロン(Conilon)
主にブラジルで栽培されるロブスタの品種系統
苦味とコクが強く、エスプレッソブレンドやインスタントに多用
加工やブレンド次第で、まろやかさを引き出すことも可能
◎ ウガンダ種(Uganda)
東アフリカのロブスタ系品種。しっかりとしたボディ感と苦味
価格が安価で、安定供給がしやすいため商用用途が多い
また、ロブスタの生産が高いのは・・・ベトナム。
他にインドネシアなどアジアの国が多いです。
■ 品種を知ると、味の背景が見える
アラビカ=酸味があって上品、ロブスタ=苦味が強く力強い
というだけでなく、品種を知ることで、その奥のストーリーや味の幅が見えてきます。
たとえば・・・
フローラルな香りを楽しみたい → ゲイシャやブルボン、SL28
バランス重視 → ティピカ、ムンドノーボ
深煎り・エスプレッソ向け → カトゥアイやロブスタ系ブレンド
珈琲は“選ぶ楽しさ”がある飲み物。
あなたの気分やシーンに合わせて、ぜひお気に入りの品種を探してみてください。
eleven coffee では、
あなたの“お気に入りの一杯”に出会うための近道として、
この《珈琲手帖》をお届けしています。
次回の《珈琲手帖》は、
▶ 「豆の“生育環境”によって、味はどう変わるのか?」
をお届け予定です。どうぞお楽しみに。