2025/06/14 17:25
第3話:生育環境の違いで、コーヒーの味はどう変わる?
「コーヒーって、どの国の豆かで味が違うよね」
「標高が高いと、酸味が出るって聞いたことある」
――そんな風に言われることがありますが、
その背景には、「育つ環境のちがい」があります。
今回は、珈琲の味わいを形づくる環境のお話です。
■ コーヒーが育つのは「コーヒーベルト」
世界中のどこでも珈琲が栽培できるわけではありません。
実は、赤道を中心とした緯度25度以内の地域でしか育ちません。
※温暖化が進む昨今では、日本でも作られています。
このエリアを「コーヒーベルト(Coffee Belt)」と呼びます。

主な生産国
中南米:ブラジル、コロンビア、グアテマラ、エチオピア
アフリカ:タンザニア、ケニア、ルワンダ
アジア:インドネシア、ベトナム、インド、ミャンマー など
気温・雨量・土壌・標高…このバランスがそろって、はじめて美味しい珈琲が育つのです。
■ 味を左右する3つの“環境要素”
① 標高(Altitude)
標高が高い=気温が低い=豆の成熟がゆっくり進みます。
それにより、香り・フルーティ・甘みが凝縮された豆になる傾向があります。
1200m以上:フローラルで複雑な香り、明るい酸味(例:エチオピア、パナマ)
800〜1200m:バランスの良い味わい(例:コロンビア、グアテマラ)
800m以下:苦味やコクが強調されることが多い(例:ロブスタ系や低地栽培豆)
※グアテマラでは、“SHB(Strictly Hard Bean)”など標高によって豆の規格に関係しています。
② 気候(Climate)
気温が15〜25℃程度の安定した気候が理想的
適度な降水量と乾季のある地域では、豆の乾燥や発酵処理がしやすい
朝晩の寒暖差があると、風味にメリハリが出やすい
例)
・エチオピア高地 → 明るく爽やか
・インドネシアの熱帯雨林 → 香りとコクが強く個性的
③ 土壌(Soil)
火山性土壌は栄養豊富で、水はけもよく、香り高い豆が育ちやすい
(例:グアテマラ、コスタリカ、ケニアなど)土のミネラルや微生物環境も、味わいに微細な影響を与えます
■ 産地の味は「環境のしるし」
たとえば・・・
グアテマラのアンティグア地区 → 火山灰土壌、標高1500m以上、冷涼な気候
→ チョコやスパイスのような深みと、バランスの良さが特徴エチオピア・イルガチェフェ → 高地、昼夜の寒暖差、豊かな土壌
→ 華やかな香り、紅茶のような軽やかさが魅力インドネシア・スマトラ → 熱帯湿潤、独自の精製法
→ アーシー(大地的)、重厚感あるコクと苦味
このように、「どこで、どう育ったか」=味の個性そのものなのです。
■ 自分の好みを“地図”で探す楽しさ
あなたの好きなコーヒーは、どんな産地でしょうか?
フルーティで軽やかな味 → 東アフリカ・中米の高地
コクと深みを重視 → アジア圏や低地栽培の豆
柔らかな甘みや香ばしさ → ブラジルやペルーの中高度地帯
そんな風に、地図をイメージして豆を選ぶのも、コーヒーの醍醐味です。
同じ原種の中でも、地域ごとの気候や環境、品種改良などで
さまざまな品種が存在します。
これは、お米で例えたら分かりやすいのではないですか?
新潟魚沼産、秋田産、山形産などの産地と
コシヒカリ、あきたこまち、つや姫…などの品種がありますよね。
それぞれに特徴があって、好みや用途の違いがあるのと同じ、
ブラジルやコロンビア・タンザニア・インドネシアなどの産地と
珈琲豆にもたくさんの品種があります。
豆によって、香りやフルーティ、甘み、コクなど、味の個性をが感じられます。

■ アラビカ種の主な品種と特徴
◎ ティピカ(Typica)
最も古いアラビカ種の品種
柔らかな甘みと優しい酸味、バランスのとれた味わい
病気に弱く、生産性が低いため、希少性が高い
◎ ブルボン(Bourbon)
ティピカの突然変異種。豊かな甘みとまろやかなコク
赤や黄のチェリーがあり、標高が高いほど複雑な風味が出る
◎ カトゥーラ(Caturra)
ブルボンの突然変異種で、背が低い
ブラジルや中米で多く栽培。軽やかな酸味とバランスの良い味
◎ カトゥアイ(Catuai)
カトゥーラとムンドノーボの交配種
生産性が高く、風味はすっきり。ブレンドにも多く使われる
◎ ムンドノーボ(Mundo Novo)
ティピカ×ブルボンの自然交配で誕生
甘みとコクがあり、やや重厚な味わい。ブラジルで多く栽培される
■ カネフォラ種(ロブスタ)の代表的品種
カネフォラ種は、アラビカに比べると品種の多様性は少ないですが、
その中にも特徴ある系統があります。
◎ コニロン(Conilon)
主にブラジルで栽培されるロブスタの品種系統
苦味とコクが強く、エスプレッソブレンドやインスタントに多用
加工やブレンド次第で、まろやかさを引き出すことも可能
また、ロブスタの生産が高いのは・・・ベトナム。
他にインドネシアなどアジアの国が多いです。
■ 品種を知ると、味の背景が見える
アラビカ=酸味があって上品、ロブスタ=苦味が強く力強い
というだけでなく、品種を知ることで、その奥のストーリーや味の幅が見えてきます。
たとえば・・・
フローラルな香りを楽しみたい → ゲイシャやブルボン、SL28
バランス重視 → ティピカ、ムンドノーボ
深煎り・エスプレッソ向け → カトゥアイやロブスタ系ブレンド
珈琲は“選ぶ楽しさ”がある飲み物。
あなたの気分やシーンに合わせて、ぜひお気に入りの品種を探してみてください。
eleven coffee では、
あなたの“お気に入りの一杯”に出会うための近道として、
この《珈琲手帖》をお届けしています。
次回の《珈琲手帖》は、
▶ 【珈琲手帖|豆知識】
風味を長持ちさせる保存方法をお届け予定です。どうぞお楽しみに